日々の考察と、邂逅

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「サンデイモーニング」を書いた日

 

 

 

 

土曜日の夜のこと

 

その日は記憶するほど晴れても雨でもなかった

 

たいして疲れていない仕事帰り

 

家の前の道は街灯も少なく静かで

 

その先には住宅街しかないような道

 

敷いて間もないのか黒いアスファルトの上

 

近づいて確認するまでもなく

 

彼または彼女は

 

黒い身を地面に横たわせていた

 

いや、死んでいた

 

 

 

 

野良の黒い猫を見るのは初めてだったと思う

 

焦げ茶色や赤色っぽい毛が混じっているのは野良猫だからだろうか

 

そんなことを考えている冷静な頭に反して

 

心臓は50mを走ったあとくらいの速さで鼓動していた

 

立ち止まっていると車が近づいてきて

 

当たり前のようにクラクションを鳴らす

 

右手を左から弧を描くように右に

 

言葉にはせず迂回してもらうよう頼んだ

 

察してくれたのかは良く見えなかったけど

 

ゆっくりと車は去っていった

 

 

 

そうだ今日はビールを飲んですぐ寝よう

 

そんな思考とは全くリンクせず体は動く

 

その黒い猫に手を伸ばしていた

 

 

 

外傷はほとんど見えなかった

 

黒いアスファルトのおかげで色も無く

 

ただ力なく横たわっている様にさえ思えた

 

このまま道路の真ん中にいては酷くなるばかり

 

ただそれだけの気持ちで脇に手を入れる

 

 

 

温かさとは程遠いけど冷めかけのコーヒーくらいの温度

 

でも1グラムも命を感じなかった

 

熱した粘土のように掌に食い込む体

 

指先に感じる滑らかな液体

 

ほんの少しでも呼吸や鼓動を感じたかった

 

彼または彼女とその命を奪った人間がいる

 

そのどちらにも関係ない俺は

 

なぜか解らない

 

今考えても解らないけど

 

声を出して泣いた

 

そして

 

「ごめんね。」って言った

 

何回も何回も言った

 

ごめんね

 

ごめんね

 

ごめんね

 

いままで出会った全ての生き物より

 

圧倒的な「生」を感じた。

 

少し抱いて歩き

 

近くの茂みを木の枝で掘り起こす

 

少し硬くなった黒い体を土に埋めた

 

 

 

 

 

家に帰ってすぐに洗面台に向かう

 

ひどく汚れてしまった手を洗うと

 

赤く濁った水が流れた

 

30秒ほどそれを眺めていると

 

心というか体というか

 

俺の中の何かが黒く濁っていく感覚

 

ぐちゃぐちゃになった頭の中で

 

鮮明に見えてきたもの

 

それは

 

「生きるという事」

 

 

 

 

 

 

2度、3度と洗い流すと

 

すっかり綺麗になった掌

 

涙も乾いていた

 

 

 

 

そうやって誰かが生きた証は

 

違う誰かが持っていて

 

自分では生きていたことを証明できない

 

そしてその誰かもいつかは

 

何処かで消えていく

 

だからと言って

 

誰かにもらった言葉を全部

 

明日に持っていけるかな

 

いけないよな

 

その言葉も、この想いも空気を揺らして溶けた

 

解けていった

 

 

 

その夜こんな歌を作った

 

 

 

" いつの日かこの想いが

 

君を描いていた陽の光を

 

偽りと切り取るなら

 

僕はサンデイモーニング

 

明日旅立つ "

 

 

旅立つ勇気は全然無いけど

 

ひとつひとつ乗り越えて行こう

 

それが大切な人に陰を落とそうとも

 

その光が偽りであっても

 

あの真っ黒い猫が教えてくれた

 

ありがとう

 

ごめんね

 

おやすみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンデイモーニング : 『 words 』

 

サンデイモーニング (Studio demo) by the quiet | Free Listening on SoundCloud